末冨芳『教育費の政治経済学』
筆者の博論をまとめたもの。
教育費における、公私の負担構造に着目し、その負担の時系列的推移と変化、「公私混合型教育費負担構造」の出現の原因を検討したもの。
私費負担が増加していることはよく言われているが、実は一人あたりの公費負担も増加してきたこと、前述の構造が私費負担が「過剰」である、という意識から成立したこと、が主な知見であろうか。
4章の教育費スポンサーとしての保護者モデルの分析も面白かった。負担に対する肯定的な意味付け因子全てに消極的な意識を持つ層は、大学が拡大するにつれて増えてきたんだろうな。
そこまで「教育財政学」の独自性に拘る必要があるのだろうか(この研究自体のオリジナリティは主張する必要があるだろうけど)ということと、やっぱり私教育費データベース作成の無理くりさ(これが出色ではあるのだろうけど)がちょっと気になった。
でも教育費や保護者モデルなどについて図を用いてきちんと分類されていて面白かった。
- 作者: 末冨芳
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2010/02/24
- メディア: 単行本
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