読書

2016年に読んだ本

1年ぶりの更新。今年は本をつまみ読みすることが多くなったので、読んだ冊数はだいぶ減った。 ブクログによれば、69冊と、昨年から30冊近く減っている。5月が一番読んでいて、12冊。10月が1冊、12月が2冊と少ない。今年読んだ本での個人的なベストを考えると…

2015年に読んだ本

ブクログを確認する限り、2015年に、雑誌やマンガを除き、98冊を読んだらしい。 残念ながら100冊には届かなかったものの、2013年が67冊、2014年が86冊ということを考えれば、相対的によく読んだ方だと思う。 月ごとに見て多いのは、4月と7月の13冊が多くて、…

ランドル・コリンズ『脱常識の社会学』

コリンズの社会学入門的著作。文庫本で買い直したので読み直し。1章で、社会学的な考え方として、契約・合理的社会の「非合理的基盤=人々の非合理的な連帯意識」について説明をした後、宗教・権力・犯罪・恋愛について、1章で論じた「非合理的基盤」の考え…

小林泰三『玩具修理者』

表題作「玩具修理者」と、中編「酔歩する男」の2篇を収録。 「玩具修理者」は始まりから不穏。喫茶店の2人の男女、昼間ずっとサングラスをかけている理由を尋ねられた女性が、 子供の頃に体験した「玩具修理者」とのことについて語り始める。・・・衝撃。 プ…

連城三紀彦『戻り川心中』

日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞した表題作を含む5作を掲載した短篇集。謎が明らかになっていくミステリとしての側面もさることながら、やはり短編それぞれに花を表象として展開される恋愛と叙情の繊細な描写がよい。もちろん感情がそのまま記述される…

六冬和生『みずは無間』

第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。無人探査機のAIである主人公の、探査の途中で出会った他のAIや自らが生み出した知性体Dとの情報交換(コミュニケーション)の物語に、地球にいた頃の常に何かを求めていた恋人みずはのエピソードが挿入される。 みずは…

アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』

クリスティのノンシリーズ物。 娘の看病のためにバグダッドを訪れ、そこからイギリスに戻る途中の、「理想の家庭」を作り上げてきた中年女性が、大雨の影響で途中での滞在を余儀なくされ、物思いにふけるうちに、これまでの人生に対する認識が反転し…。主人…

山形浩生『新教養主義宣言』

プロローグのアジテーションが好き。欧米では教養が必須で、みたいな話はよく聞くけれど、 なぜ「教養」が必要なのかは分かるようで分からなかった。この本のプロローグで書かれているように、「教養って価値判断のベースになるもの」だからってのは一つの回…

水月昭道『高学歴ワーキングプア―「フリーター生産工場」としての大学』

時間ができたので、新書を読む。高学歴ワーキングプア析出の背景やその実態を多少踏まえつつ、社会や学校法人への恨みつらみを書いた本。 正直、そう学校法人や既得権益者としての専任教員を批判せんでも、と思わなくもない。しかし、わざわざ博士まで進学し…

苅谷剛彦+増田ユリヤ『欲ばりすぎるニッポンの教育』

対談本と言うよりは、啓蒙本といった印象。 明確な対立軸が設定されて、対等な立場で議論しているわけではなく、苅谷氏がちょっと上の立場にいるようなので。苅谷氏の主張は、むやみに改革を語るのではなく、財政面や人材配置、あるいは学力という明確な基準…

竹内洋『学歴貴族の栄光と挫折』

日本の近代シリーズの1冊として書かれ、文庫落ちしたもの。 旧制高校の階層移動・文化戦略による意味づけを中心に、旧制高校の誕生や位置づけ、旧制高校的教養主義の戦後の再興そして終焉について描いている。 筆者は『立身出世主義』や『教養主義の没落』な…

ランドル・コリンズ『ランドル・コリンズが語る 社会学の歴史』

原書のタイトル、"Four Sociological Tradition"の通り、社会学の伝統を大きく4つに分け、そのそれぞれの展開についてコリンズが語る本である。 社会学史が体系的にまとめられていて、分かりやすい本ってあまり見当たらないように思う。 けれど、この本は体…

小塩隆士『教育を経済学で考える』

その名の通り、経済学を教育という対象に当てはめた本である。たとえば矢野眞和先生の本が教育に経済学的な見方を当てはめるために、経済的な変数による教育の分析を行ったものであるとすれば、この本はややアプローチを異にしており、教育という対象に対し…

末冨芳『教育費の政治経済学』

筆者の博論をまとめたもの。 教育費における、公私の負担構造に着目し、その負担の時系列的推移と変化、「公私混合型教育費負担構造」の出現の原因を検討したもの。 私費負担が増加していることはよく言われているが、実は一人あたりの公費負担も増加してき…

矢野眞和『「習慣病」になったニッポンの大学――18歳主義・卒業主義・親負担主義からの開放――』

教育について考える黄色本シリーズ。 このシリーズを読むのは、広田・伊藤両先生の本、児美川先生の本についで3冊目だが、どの本も自分が勉強になるだけでなく、ほかの人にも読んで欲しい、と思うような本だった。 さて、本著だが、著者の教育に対する経済学…

中村高康『大衆化とメリトクラシー――教育選抜をめぐる試験と推薦のパラドクス』

著者の博論を加筆修正したもの。 筆者が指摘する通り、教育と選抜や大学進学を語るときにその対象とされるのは、ほとんどが学力試験・エリート選抜で、大学入学者の3割を超えるらしい推薦入試(AO含む)についてはほとんど論じられてこなかった。筆者はその…

湯浅誠『どんとこい、貧困!』

よりみちパン!セシリーズ。 子ども向けに書かれた本だが、湯浅さんの基本的な価値観や立ち位置がわかる良書。 メインテーマは貧困で、そこに若者や自己責任論などが絡んでくる感じ。これらのテーマの問題は、それについて深く考えずに、あるいは知ろうとせ…

小谷敏・芳賀学・土井隆義・浅野智彦『〈若者の現在〉政治』

シリーズ本の2作目。 どの論考もあまりこれまでの研究が引用されておらず、かつ過度に分析的でないのは、まさしく〈若者の現在〉を示そうとしたからか。 個人的には辻・藤田論文と中西論文が面白かったかな。若者の政治性は実はあまり語られず、〈非〉-政治…

吉川徹『学歴分断社会』

近年流行りの格差社会論に対して、格差減少の正体は学歴分断線である、あるいは格差論と学歴社会論はきちんと分けて論じなければならないと主張する本。新書であるが故に、一般向けに書かれている。 しかし、あとがきで筆者も述べている通り、一般向けである…

ウルリッヒ・ベック『グローバル化の社会学』

理論家?ベックがグローバル化について論じた本。 グローバリティとグローバリズムの分類や再帰性とグローバル化の関連など、いくつか興味深いところがあった。 けれど、全体的にちょっと何言ってるかわからんオーラが...。 グローバル化の社会学―グローバリ…

菅山真次『「就社」社会の誕生—ホワイトカラーからブルーカラーへ』

久々の更新。 大著であった。 ただ、論文をまとめたものであるにしては、やや冗長であるような気がした。 労使関係論や日本的雇用慣行についての知識が少ないため、この本を充分に理解できたとは全く思えないが、(学校と)職業の接続面について、細かく分析…

ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』

L研用。 今日のL研は面白かった。 政府に対応するものとしての市民社会、その内部に公共性が生起するという構図は分かりにくいけれど面白い。 ただ、やはり公と私と公共性などの区別が分かりにくい。 もう一度読み直せば分かるのだろうか。 公共性の構造転換…

天野郁夫『教育と選抜の社会史』

ちくま学芸文庫バージョン。 教育と選抜がどのように日本において、どのように成立してきたのかについて、比較・歴史の手法を用いて描き出している。 日本の選抜システムは、比較的早い段階から学歴主義であり、公–私、普通–専門などの軸ごとの分化、さらに…

雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について—貧困、アイデンティティ、ナショナリズム』

雨宮さんと萱野さんの対談本。 基本的には本人たちが書いていること、また他の人たちが書いていることをなぞるものであった。 でもやはり、貧困がアイデンティティの揺らぎを生み、それがナショナリズムや新自由主義と結びつくということは考えなければいけ…

デイヴィッド・オレル『なぜ経済予測は間違えるのか』

Sゼミの文献。 過小評価について書かれた部分があったが、過小に見積もることは、一見マイナスしか生み出さないように見えて、実はWin-Win関係を生じさせるものなのかもしれない。 たとえばある事業を行うことのリスクを過小に見積もることによって、事業者…

マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

L研用。 面白かった。 ウェーバーによると、プロテスタントは天職観念と禁欲主義によって富を蓄積するようになったために、資本主義の精神に親和的であったらしい。 ただ、富を蓄積することは不平等を肯定することになってしまう。 これは宗教的によくないの…

竹内洋『日本のメリトクラシー』

1,2章だけは何度も読んできたが、最後まで読み通したのは初めて。 やはり理論的で面白い部分は1,2章か。 1章でこれまでの教育とトランジション研究のパラダイムについて語り、2章でその後として、Rosenbaumのトーナメント移動およびBarton Clarkの冷却論を援…

K.マルクス・F.エンゲルス『共産党宣言』

L研用に。 基本的にマルクス主義の表面をなぞり、共産党の独自性を強調する内容なので、この本独自の目新しい議論というものはほとんどない(のだろう)。 この本の内容も興味深いが、解説にあるように日本においてこの本がどのように受容されていったかが気…

蟹沢孝夫『自分を伸ばす会社 自分を殺す会社』

たとえば本田由紀先生だったら正規雇用非正規雇用間の大きな溝や周辺部の拡大そしてやりがいの搾取などを持ち出して声高に疑問を投げかけるだろうと思ってしまうようなそんな本。 確かに夢を追い続けてしまう人々が一定数存在することは大きな問題で、諦める…

仲正昌樹・清家竜介・藤本一勇・北田暁大・毛利嘉孝『現代思想入門』

だいぶ前から少しずつ読んでて、ようやっと読み終わった。 「現代思想」としてフランクフルト学派、ポスト構造主義、リベラリズム、カルチュラル・スタディーズを取り上げ、そのそれぞれに対して、第一線の研究者が簡潔にまとめている。 それぞれの思想のま…