2011-01-01から1年間の記事一覧

竹内洋『学歴貴族の栄光と挫折』

日本の近代シリーズの1冊として書かれ、文庫落ちしたもの。 旧制高校の階層移動・文化戦略による意味づけを中心に、旧制高校の誕生や位置づけ、旧制高校的教養主義の戦後の再興そして終焉について描いている。 筆者は『立身出世主義』や『教養主義の没落』な…

ランドル・コリンズ『ランドル・コリンズが語る 社会学の歴史』

原書のタイトル、"Four Sociological Tradition"の通り、社会学の伝統を大きく4つに分け、そのそれぞれの展開についてコリンズが語る本である。 社会学史が体系的にまとめられていて、分かりやすい本ってあまり見当たらないように思う。 けれど、この本は体…

小塩隆士『教育を経済学で考える』

その名の通り、経済学を教育という対象に当てはめた本である。たとえば矢野眞和先生の本が教育に経済学的な見方を当てはめるために、経済的な変数による教育の分析を行ったものであるとすれば、この本はややアプローチを異にしており、教育という対象に対し…

三輪哲「計量社会学ワンステップアップ講座(3) 潜在クラスモデル入門」

学会発表をしてきたところ、聞いてくださったらしいI先生から、潜在クラス分析をやってみたらというお言葉をいただき、この論文を紹介して頂いたので、読んでみた。どうやらカテゴリカルな変数における因子分析、みたいなものらしい。カテゴリカルな変数を、…

末冨芳『教育費の政治経済学』

筆者の博論をまとめたもの。 教育費における、公私の負担構造に着目し、その負担の時系列的推移と変化、「公私混合型教育費負担構造」の出現の原因を検討したもの。 私費負担が増加していることはよく言われているが、実は一人あたりの公費負担も増加してき…

矢野眞和『「習慣病」になったニッポンの大学――18歳主義・卒業主義・親負担主義からの開放――』

教育について考える黄色本シリーズ。 このシリーズを読むのは、広田・伊藤両先生の本、児美川先生の本についで3冊目だが、どの本も自分が勉強になるだけでなく、ほかの人にも読んで欲しい、と思うような本だった。 さて、本著だが、著者の教育に対する経済学…

中村高康『大衆化とメリトクラシー――教育選抜をめぐる試験と推薦のパラドクス』

著者の博論を加筆修正したもの。 筆者が指摘する通り、教育と選抜や大学進学を語るときにその対象とされるのは、ほとんどが学力試験・エリート選抜で、大学入学者の3割を超えるらしい推薦入試(AO含む)についてはほとんど論じられてこなかった。筆者はその…

トーマス・マン『魔の山』

ふと思い立って購入。いわゆるビルドゥングスロマン小説。セテムブリーニをそれほど好きではないのに(念の為にいっておくと、だからといってナフタに共感するわけではない)、ペーペルコルンが出てきた途端に、セテムブリーニ・ナフタ両氏と共同戦線を張り…

湯浅誠『どんとこい、貧困!』

よりみちパン!セシリーズ。 子ども向けに書かれた本だが、湯浅さんの基本的な価値観や立ち位置がわかる良書。 メインテーマは貧困で、そこに若者や自己責任論などが絡んでくる感じ。これらのテーマの問題は、それについて深く考えずに、あるいは知ろうとせ…

小谷敏・芳賀学・土井隆義・浅野智彦『〈若者の現在〉政治』

シリーズ本の2作目。 どの論考もあまりこれまでの研究が引用されておらず、かつ過度に分析的でないのは、まさしく〈若者の現在〉を示そうとしたからか。 個人的には辻・藤田論文と中西論文が面白かったかな。若者の政治性は実はあまり語られず、〈非〉-政治…

吉川徹『学歴分断社会』

近年流行りの格差社会論に対して、格差減少の正体は学歴分断線である、あるいは格差論と学歴社会論はきちんと分けて論じなければならないと主張する本。新書であるが故に、一般向けに書かれている。 しかし、あとがきで筆者も述べている通り、一般向けである…

ウルリッヒ・ベック『グローバル化の社会学』

理論家?ベックがグローバル化について論じた本。 グローバリティとグローバリズムの分類や再帰性とグローバル化の関連など、いくつか興味深いところがあった。 けれど、全体的にちょっと何言ってるかわからんオーラが...。 グローバル化の社会学―グローバリ…

Jennie E. Brand and Yu Xie "Who Benefits Most from College? Evidence for Negative Selection in Heterogeneous Economic Returns to Higher Education"

Iゼミ用。 大卒学歴が将来の収入に与える影響についての論文。 経済学の分野では、合理的選択理論にもとづいて、利益を追求するために、大卒学歴が収入へ与える効果が最も大きいのは大学進学しやすい人々においてであると考える(らしい)。 大学進学を選択…

菅山真次『「就社」社会の誕生—ホワイトカラーからブルーカラーへ』

久々の更新。 大著であった。 ただ、論文をまとめたものであるにしては、やや冗長であるような気がした。 労使関係論や日本的雇用慣行についての知識が少ないため、この本を充分に理解できたとは全く思えないが、(学校と)職業の接続面について、細かく分析…

ユルゲン・ハーバーマス『公共性の構造転換』

L研用。 今日のL研は面白かった。 政府に対応するものとしての市民社会、その内部に公共性が生起するという構図は分かりにくいけれど面白い。 ただ、やはり公と私と公共性などの区別が分かりにくい。 もう一度読み直せば分かるのだろうか。 公共性の構造転換…

天野郁夫『教育と選抜の社会史』

ちくま学芸文庫バージョン。 教育と選抜がどのように日本において、どのように成立してきたのかについて、比較・歴史の手法を用いて描き出している。 日本の選抜システムは、比較的早い段階から学歴主義であり、公–私、普通–専門などの軸ごとの分化、さらに…

雨宮処凛・萱野稔人『「生きづらさ」について—貧困、アイデンティティ、ナショナリズム』

雨宮さんと萱野さんの対談本。 基本的には本人たちが書いていること、また他の人たちが書いていることをなぞるものであった。 でもやはり、貧困がアイデンティティの揺らぎを生み、それがナショナリズムや新自由主義と結びつくということは考えなければいけ…

デイヴィッド・オレル『なぜ経済予測は間違えるのか』

Sゼミの文献。 過小評価について書かれた部分があったが、過小に見積もることは、一見マイナスしか生み出さないように見えて、実はWin-Win関係を生じさせるものなのかもしれない。 たとえばある事業を行うことのリスクを過小に見積もることによって、事業者…

マックス・ヴェーバー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』

L研用。 面白かった。 ウェーバーによると、プロテスタントは天職観念と禁欲主義によって富を蓄積するようになったために、資本主義の精神に親和的であったらしい。 ただ、富を蓄積することは不平等を肯定することになってしまう。 これは宗教的によくないの…

コーマック・マッカーシー『ブラッド・メリディアン』

研究になかなか身が入らないので、一休み。 とにかく描写が濃い。 句読点を省いて形容を重ねた文章は圧倒されるほど。 またその中で描かれる「判事」の存在感がすごい。 なんとなくモーガン・フリーマンを思い浮かべつつ読んだのだが(たぶん長身で存在感の…

竹内洋『日本のメリトクラシー』

1,2章だけは何度も読んできたが、最後まで読み通したのは初めて。 やはり理論的で面白い部分は1,2章か。 1章でこれまでの教育とトランジション研究のパラダイムについて語り、2章でその後として、Rosenbaumのトーナメント移動およびBarton Clarkの冷却論を援…

K.マルクス・F.エンゲルス『共産党宣言』

L研用に。 基本的にマルクス主義の表面をなぞり、共産党の独自性を強調する内容なので、この本独自の目新しい議論というものはほとんどない(のだろう)。 この本の内容も興味深いが、解説にあるように日本においてこの本がどのように受容されていったかが気…

広田照幸「第六章 学校の役割を再考する—職業教育主義を超えて—」

神野直彦・宮本太郎編『自壊社会からの脱却—もう一つの日本への構想』所収。 近年の筆者らしい(学校)教育全体を概観し、それ自体あるいはその周辺部分に関する意味付けを整理する内容。 筆者は「教育の福音」イデオロギーのもと、職業教育主義が近年の教育…

蟹沢孝夫『自分を伸ばす会社 自分を殺す会社』

たとえば本田由紀先生だったら正規雇用非正規雇用間の大きな溝や周辺部の拡大そしてやりがいの搾取などを持ち出して声高に疑問を投げかけるだろうと思ってしまうようなそんな本。 確かに夢を追い続けてしまう人々が一定数存在することは大きな問題で、諦める…

K.Davis and W.E.Moore, "Some Principles of Stratification"

だいぶ前に、Oさんに教えていただいた論文。 stratificationの一般的な原則と、その様々な差異について論じたもの。 人々を配分する以上、集団間の差異が生じるのは仕方ない。 ましてやそれぞれの社会的地位間には重要性に幅があるのだから、階層化が起こっ…

仲正昌樹・清家竜介・藤本一勇・北田暁大・毛利嘉孝『現代思想入門』

だいぶ前から少しずつ読んでて、ようやっと読み終わった。 「現代思想」としてフランクフルト学派、ポスト構造主義、リベラリズム、カルチュラル・スタディーズを取り上げ、そのそれぞれに対して、第一線の研究者が簡潔にまとめている。 それぞれの思想のま…

盛山和夫『統計学入門』

パラパラと読む。 最初の方は基本的な事柄の説明で、「これくらい知ってる」と思いながら読み飛ばしていたのだが、中盤以降、数式が入ってきてからも「よく分からない」と読み飛ばした。読み飛ばさざるをえなかった。 これまで統計学について、十分体系的な…

E.デュルケム『自殺論』

L研で読む本。 全部で3編に分かれており、第1編では自殺の原因と考えられている様々な個人的要因と自殺の関連を否定・疑問視し、第2編では有名な自己本位的自殺・集団本位的自殺・アノミー的自殺の分類を提示している。第3編ではそれらを踏まえて、自殺と殺…