小塩隆士『教育を経済学で考える』

その名の通り、経済学を教育という対象に当てはめた本である。

たとえば矢野眞和先生の本が教育に経済学的な見方を当てはめるために、経済的な変数による教育の分析を行ったものであるとすれば、この本はややアプローチを異にしており、教育という対象に対し、経済学的なモデルを当てはめて、個人あるいは社会の行動を分析するというものである。

前半は主に大学進学選択、後半はゆとり教育学校選択制を中心とした2000年代の教育改革について触れられている。

教育社会学をやっていると、経済的な変数を用いた教育の分析はたまに見かけるものの、この本のようなアプローチはよく見るとは言いがたい。
経済学者の方から見るとこう見えるのか、と勉強になる本であった。


ところで、小塩先生はゆとり教育にかなり批判的な論調であるが、これはあくまで「学力」という一側面を見ての話だとも言えるので、やや留保が必要かもしれない。
(もっとも、だからといって「学力」に焦点化するのが良くないという事ではないし、ゆとり教育批判が間違っているというつもりも全くない。ここで僕がこのように思ってしまうのは、やはり教育にこだわりがあるからなのだろうか。)


教育を経済学で考える

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