六冬和生『みずは無間』

第1回ハヤカワSFコンテスト大賞受賞作。

無人探査機のAIである主人公の、探査の途中で出会った他のAIや自らが生み出した知性体Dとの情報交換(コミュニケーション)の物語に、地球にいた頃の常に何かを求めていた恋人みずはのエピソードが挿入される。
みずはとのエピソードは非常に生々しく、本筋の物語は理数の専門用語が溢れ、どちらも巧く描かれている。

東浩紀の選評にある「究極のセカイ系」という表現がしっくりくる、地球的な日常と宇宙的な非日常(というのも地球で生活する人間が見るから非日常になる訳で、こちらも日常なのかも知れない)が、1つのテーマに収斂する、重みのある物語だった。